「これから一体どうなるのだろう。わたしの選択は間違っていなかっただろうか」、そんな思いが、何度も胸中をよぎった。衣類や洗面道具、聖書を入れたスポーツバッグが、肩にずっしりと食い込んでくるようだった。修道院に続く長い坂道を上り終え、修道院の呼び鈴を押すまでの重苦しい感覚は、いまでもはっきり覚えている。
あれはもしかすると、神父への道を妨害しようとする、悪魔の最後の誘惑だったのかもしれない。悪魔はわたしの心に、これから起こることへの不安や恐れを吹き込み、修道院へ向かうわたしの足を止めようとした。しかし、わたしは神の御旨を信じて最後まで歩きとおした。
実際のところ、これまでの修道生活の中で悪魔があのとき囁いたほどひどいことはなかった。確かに苦しいことは山ほどあったが、そのたびごとに神様がそれを乗り越える力も下さった。苦しみが大きければ大きいほど、与えられる恵みも大きかった。悪魔はわたしたちに苦しみだけを告げ、恵みについては語らない。それが悪魔の常とう手段だ。これまでの道を守り導いて下さった神様が、これからも必ず守って下さると信じて、これからの人生の道を歩んでゆきたい。