その日から、N君への悪戯はなくなりました。
それだけではなく、小児麻痺の為、いつも車椅子で母親と登下校するU君に関わり、手伝うクラスメートが増えていきました。
U君は毎日、放課後になると歩行器に掴まり、夕陽の射す廊下をゆっくり歩く練習をしていました。やがて卒業式の日。卒業証書授与の時、担任の先生がU君の名前を呼ぶと、「はい!」という返事は体育館内に響き渡り、車椅子から立ち上がったU君が慎重に歩みを進め、その姿を全校生徒がじっと見守りました。校長先生の前に辿り着き、両手で卒業証書を受け取った瞬間、体育館は無数の拍手に包まれました。U君のお母さんはハンカチで目頭を押さえていました。
あの頃から30年の年月は流れ、クラスの仲間達はそれぞれの人生を今日も歩んでいます。そして、これからも、先生が道徳の授業で語ったあの思いを、私達が忘れることはないでしょう。