しかし、意外にも隆は、当時設立されて間もない長崎医科大学に進学しました。もし隆が長崎に行っていなければ、その後の運命はまったく違うものになっていたのは確かです。
原爆の被害を受けることもなく、ゆえに『長崎の鐘』や『この子を残して』など、平和を訴える著作を書くこともなく、それらの本が世界中の人に読まれ感銘を与えることもありえませんでした。
それ以前に、おそらく、カトリック信者になってはいなかったでしょう。
永井博士の立派な生涯とは比べるべくもないのですが、私も18歳の時、生まれ故郷の山陰から長崎に大学進学のため旅立っていなければ、その後の人生はまったく違っていたと断言できます。おそらくカトリックの洗礼は受けていませんでした。ゆえに、その後、カトリックの精神に基づく学校に勤めることも、キリスト教関係の本を書くことも、この「心のともしび」にエッセーを寄稿させていただくこともありえませんでした。
新しい世界への旅立ちによって、私たちは未知のもの、未知の人に出会えるものです。キリストの教え、その教えを信じる人たちに出会えるチャンスもあるでしょう。その様々な出会いを通して、より幸いな人生に導かれるようにと願っています。