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始めの一歩

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

1・2・3・4・5・6・7・8・9、この中で最も好きな数字はどれですか?というアンケートを友人たちに答えてもらったことがある。最も人気があったのは1で、理由は「1番になりたい」、「1人が好き」などだったが、中に「1は始まりだから」という回答があって、興味深かった。確かに、人間は何かを新しく始めることが好きな生きものでもある。

思い出せば、入学や入社など初めての世界に入っていく時は、期待と不安で胸が一杯になった。それまでとは違う日々が始まるのだ。頑張ろう、と張り切っているが、未知の世界が不安で心配でもある。この喜びと恐れが混ざり合って、胸が騒ぐのが、一歩を踏み出した時の心境ではなかったろうか。

また、私たちは思い定めて何かを始めることがある。例えば、大人になってからの習い事や勉強、ボランティアなどがそうだろう。その人の内部の時間が満ちてきて、始めたことなので、外側にある年齢などとというものには関係がない。30代の終わりに定時制の高校に通った人もいれば、60歳を越えて大学に通い、博士号を取得した人もいる。

始めるとは、自分をゼロの位置に置くことだ。傲りや飾りを捨てて、無心になると、自分自身が開かれていく。すると、最初は小さな泡のように、やがては泉のように湧いてくるものがある。それは静かな喜びだ。世界を迎え入れる喜びだ。

無心で待っている者に、善きものが与えられないわけがあるだろうか。それは信じられてもよいのではないだろうか。

新しい年が開かれた。私たちも静かに開かれていく。