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友好

松浦 信行 神父

今日の心の糧イメージ

4年前、A夫人が洗礼を受けられました。悩みを持った様子でもなく、にこやかで、なぜ今洗礼?と私は思っていたのです。その後A夫人の紹介者の方が、A夫人のご主人が寝たきりで言葉も出なくなっていること、A夫人が一人で介護しているので心配だから訪問して欲しいと、頼んでこられました。

A夫人宅を訪ねてみると、何人かの友人がすでに集まっておられ、Aさんがまるで元気であるかのように会話が続いていくのにびっくりしながら、私はその会話に耳を傾けました。

色々話を聞いていくと、一度Aさんに出会ったなら、関わらずにはいられない不思議な存在で、様々な人がAさんと出会い、今度は出会った者同士が旧友のように関わり始めるのだそうです。寝たきりになって10年以上も経つこの頃でも、それは同じ状況だそうです。そんなAさんの友人達に、夫人も支えられ、楽天的に生きてこられたようです。

夫人が、「主人の親友のBさん家族の食事に誘われた時、帰り際にタクシーで帰ってと言われ、私電車でも大丈夫ですと答えたら、あなたに何かあったらご主人が可哀想じゃないかって言葉が返ってきたのよ。まるで、私のことは二の次のように言うのよ。」と笑いながら語ってくれました。

私もその時から、ときどきこのAさん宅で祈りをするようになり、親友のBさん、A夫人を教会に紹介してくださったご夫婦とも親しくなっていきました。昨年はBさんの両親が立て続けに亡くなり、是非とのことで葬儀を引き受けさせていただきました。

AさんとBさんの関わりの中に、色々な人が結びつき、大切なものが人へと伝わり、親しさが人間を支え続ける豊かさを、私も味わうことが出来るこの頃です。