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2人3脚

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

ピアノのレッスンに行ったとき、先生とパートナーシップについてお話したことがありました。折しもご両親を亡くされた先生を励まそうと「優しいパパ先生がいらっしゃるから」と申し上げると、先生は意外なことを言われました。

「パパがいてくれて嬉しいけれど、夫と両親は別の存在ね。人間は結局独りなんじゃないかしら」

パパ先生とは先生のご主人のことです。有名なファゴット奏者で、先生となさるコンサートではいつも素敵なアンサンブルを奏でられます。お二人は、文字通り2人3脚で音楽の道を歩んでこられました。仲の良さは門下の皆が知るところです。それでも、先生が「人間は独り」と言われたのはなぜなのでしょう。

2人3脚は、元はスポーツ競技の名前ですが、比喩的には2人の人間が強く力を合わせることを意味します。今風にいえば「パートナーシップ」です。一緒に走らないと動けない、でも相手にベッタリ頼ってしまっても、やはり動けないのです。

パートナーシップを作るとき、お互いに頼りすぎると、心理学でいう「共依存」の状態になり、双方の自由が奪われてしまいます。先生はその一線を心得ておられたのではないかと思います。パパ先生とは強く結ばれているけれど、自立は失っていない。お二人の関係は、この点で健全なのです。

神様とのパートナーシップにおいては、自分の力ではどうにもならず、全面的に委ねるしかない場合があります。ここが人間同士の2人3脚と違うところでしょう。一方、自立心を発揮できたときにも神様の後押しを感じることがあります。これは、まさにパートナーシップです。

転ばない2人3脚の技術は、生きる技術そのものかもしれません。