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心を開く

村田 佳代子

今日の心の糧イメージ

20年余りも前の事になります。年に一度晴海の国際展示場で、アートエキスポという催しがありました。

私は第1回展に誘われて出品しましたところ、第2回展でブース個展をしてみないかと勧められ、力試しとばかり10畳程度のブースでささやかな個展を開きました。中サイズの作品を20点と小品10点を飾りましたが、作品は全て窓を描いたものばかりで、看板は、「窓・心の表現」とあり、下に小さく「村田佳代子作品展」としました。来場者に趣向が珍しいと思われたようで、お陰様で大きな反響がありました。思いがけなく高野山の月刊誌の表紙を描く仕事を頂くきっかけともなり、私にとっては次の仕事に繋がる貴重な経験ともなりました。

ほんの少し窓が開いていて隙間から一筋光がさし込んでいたり、窓が閉まっていて雨足が窓を打っていたり、大きく開いた窓から大空と広がる海原が見えたり、眼下の街並みが見えたり庭の花園が見えたりという具合です。天窓から星空をあおぐ、掃き出し口の小さな窓から猫がのぞくなど、思いつく窓の表情をあれこれ描きました。窓そのものも洋館あり日本家屋あり、鉄格子のはまった古城、鎧戸が付いたフランス窓、ステンドグラスの教会の窓など描きながら私自身も楽しんだ懐かしい思い出です。

私は心の表情を窓に込めて描き、見る人に何かを感じて欲しかったのです。閉ざした窓からは寂しさを、少し開くとホッとした希望を、そして何より開かれた窓で変化に富んだ外の様子から楽しさや喜びを。思った通り観客の皆様は色々感想を云って下さり、開かれた心の素晴らしさを伝える事が出来ました。

心を開くとは自分を解き放ち、周囲の人や環境を暖かく受け入れる事なのだと思っていたからです。