実は、私が思春期の時期、友達との会話に深く悩んだことがありました。仲間の集まりに出かけても、何を話せばよいのか分からず〈早く家に帰りたい〉とその場を離れては自室の布団に潜り込み、人並にコミュニケーションがとれない自分への嫌悪感に苛まれていました。その頃、ある先生から「話すことが苦手ならば、まずは聞き上手になることから始めたらいい」という助言をいただき、少し気が楽になった私は、徐々に閉ざしていた心の扉を開き始めたのでした。やがて、自分なりに会話の研究をしてみると、心の中に「会話スイッチ」があることに気づきました。人と会い、そのスイッチを押すと、私は人の話にそっと頷き、時折、質問をしながら〈会話とはAと言えばBという連想ゲーム〉という感覚が養われていきました。
このような思春期を過ごした私が大人になり、講演や司会に目覚めてゆく道をふり返ると、〈人生は面白い〉と思わずにはいられません。