「きれいなものはきれいです。しかし神様のほうが比較にならないほど素晴らしい」と言った。話は途切れ、父は「あと神様の話はしないのですか」と聞いたが、司祭はとくに何も話さずに、楽しそうにお礼を言って教会に帰っていった。
次の週、教会に別の司祭がミサを立てに来た。青い目の司祭は若者たちとのフォークダンスに夢中になり、アキレス腱を切り外科病院に入院したという。家でそのことを話した。次の日、父は三段重ねの重箱に自分で料理を作り、夕暮れになるとどこかに消えた。母と私は「どこにいくのかな」と不思議に思った。次の日も仕事帰りに材料を買い、料理をしては行く先も告げずに消えた。なぜか青い目の司祭の回復は早く、1週間で退院してきた。ギブスをしたまま祭服を来てミサを立てた。ミサが終わると、司祭から「あなたのお父さんが毎日、ぼくの好きな料理をもってきてくれたので、"サンキュー"と伝えておいて」と言われた。
家に帰るなり、父に「神父様が"サンキュー"って言っていたよ」と言った。父はほほ笑み、青い目の司祭に心を開いていた。
司祭自身が、19歳でアメリカの今どきの青年だった時に、教会の座席で祈っていたら、突然熱い霊に体が包まれたのだそうだ。
そんな体験をもつ司祭との出会いから、父は急速に神様に心を奪われていった。