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心のともしび

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

毎年、高校を巣立っていく卒業生達に、私は大好きな聖書の言葉--「あなたは地の塩、世の光 です」(マタイ5・13~14)--を贈ります。そして、卒業式当日、この言葉に託して、私の思いを彼らに話します。

塩は、生きていく上で欠かすことのできないものであり、私達の食事を、味わい深いものにしてくれます。光は、暗闇の中にあってこそ、その輝きを増すことができます。どちらも、ほんの少しあるだけで、大きな効果を発揮します。小さな光であって も、暗闇の中にいる人にとっては、大きな慰めとなり、希望をもたらすことができるのです。

今や、街中では、一年中イルミネーションがまたたき、にぎやかさでは、都会も地方も変わり がなくなりました。しかし、その片隅では、それとは無縁に暮らす人々がいます。社会の中で、職や住まいを失い、様々な苦しみや悩みを抱えながら生きている 人々がいます。

預言者イザヤは「飢えた人にあなたのパンを割って分け与え、さまよう貧しい人をあなたの 家に招き入れなさい」(イザヤ58・7~8)と呼びかけ、「そうすれば、あなたの光は曙のように射し出で、あなたの傷は速やかにい やされます」と人々に告げました。

人は、周りの人々に温かく優しい心で接することによって、相手をいやすだけではなく、自 分自身をも、自分にしかできない役割に気づかされ、神から与えられた存在価値を見出すことができるのです。

学び舎を巣立っていく生徒達が、いずれ社会に出たとき、弱い立場に置かれた人々のことを 省みて、足元を照らす灯りとなって、貢献できる人となりますよう願わずにはおれません。