私はこのとき、長崎大学に通う21歳の大学生。
前年4月にローマで行われた復活祭のごミサの中で、幸いにも教皇ヨハネ・パウロ二世その人から、カトリックの洗礼を受けていました。
そして、10カ月後、長崎で教皇を迎えたのです。日中の最低気温がマイナス3度、その冬一番の寒波に襲われた野外ミサでの5万7千人の会衆の一人として・・・。
このとき見たヨハネ・パウロ二世の姿を私は忘れることができません。
大歓声の中、ほほえみを絶やさず手を振るあたたかな人柄。2カ月半もの間、文字どおり寝食の時間を削り、勉強をしてきたという日本語によるミサ、そして説教。その深い知性と篤い信仰をうかがわせる力強い声の調子。2時間以上も続くミサの間、横なぐりの吹雪にさらされながら自分の務めを粛々と誠実に果たす姿。
常に愛のために、勇気をもって行動する教皇の精神を目にすることができたのです。
時にテロリストの凶弾に倒れながら、26年間に、世界129カ国を精力的に飛び回りました。数々の平和行動の実践、東欧の民主化運動への精神的支援、生命倫理の分野でのキリスト教的道徳観の再提示など、宗教の枠を超えて現代世界に大きな影響を与えてきた功績は、計り知れません。
帰天後、わずか9年で列聖されたヨハネ・パウロ二世は、これからも、天国からより多くの人々を支え励ましてくださるでしょう。