私の場合、仕事柄、出版社の人たち、取材先の人たち、講演先の人たち、文学講座の受講生、全国の読者の人たち・・。と、また、次から次に思い出されてきりがない。
私は時々、心の中で思い出すだけではなく、その人たちの名前を列記してみることがある。
たいてい心身が弱っている時である。
先日も舌の先が赤くなって痛み、ものが食べられない、しゃべれないという苦しみを味わった。昨年、大腸ガンになったこともあり、舌ガンを疑い、数日眠れなかった。
そんな日、気分をまぎらわすために、なつかしい人たちを列記してみたのである。
すると、不思議、不思議。
すらすらと100人以上の人の名前が書けると、何だか、心がにぎやかになって来たのだ。
「ああ、わたしは、これまでこれらの人々の愛情や励ましを受けて生きてきたのだ」と思うと、ありがたい、勿体ないという気持ちで涙がにじみ出てきた。
悲しみの涙ではなく、嬉し涙である。
そういうことを数日繰り返しているうちに、いつしか、舌の痛みが気にならなくなり、舌ガンではなく舌炎であることがわかり安心した。人は人によっていやされるということがつくづくわかった。
その上、私には幼少の頃から今日まで聖家族に祈るのが日課である。聖家族は私にとって、かけがえのないなつかしき人々である。