▲をクリックすると音声で聞こえます。

なつかしい

熊本 洋

今日の心の糧イメージ

人間は、いろいろなものに懐かしさを感じます。景色、街、ふるさと、友人、知人、先生、そしてその写真や、目に見えない香り、歌、言葉など、さまざま。数え上げると切りがありません。

懐かしさとは何か。心がひかれて離れ難いこと。かつて慣れ親しんだ日や事物を思い出して、昔に戻ったようで楽しいこと。そこに無限無償の大きな愛を感じること。過去と未来に生きる人間が、一瞬、時間空間を超越して、深い思い出に耽る貴重な人生のひとときとも言えるかも知れません。懐かしさは、心を癒し、昔の元気を、そのまま取り戻してもくれます。

そのようなことから、懐かしさを喚起し、それを満足させてくれるイベントが行なわれています。身近なクラス会、同窓会などはその典型。

ある懐かしさが広まり、多くの人に共有されると、事態は文化的、経済的、社会的影響のあるものとなります。大自然を愛で讃える日本人の、古くからの日の出を拝む慣習や、今やだれもが知る東日本大震災の津波に耐えぬいた陸前高田市の奇跡の一本松のモニュメント。これらは、人々の大自然への懐かしさの結晶と言えます。奇跡の一本松の懐かしさには、悲しみや淋しさも伴ってしまいます。

このような懐かしさは、なぜ起こるのか。「神の似姿に創られた」人間の心底からの自然の発露だと思います。人間と神との関わり、人間同士の関わり、私たち人類共通の"わが家"である地球との関わり、これらの関わりの中に、懐かしさが生じ、存在します。優しさ、無償の愛あっての懐かしさです。「懐かしさを多く創る人生」「だれもが懐かしく思う環境」、「だれからも懐かしまれる国」、これらを私たちのモットーにしたいものであります。