私は、当時この話を新聞で読んで、死ぬ前に息子に向かって変わった遺言をした人がいたことを思い出しました。
「私の死後1ヶ月の間は、毎日一番良い洋服を着て1人で部屋に座り、30分間考えてくれないか」と父親は言いました。息子は父の死後、その願い通りに、その約束を守りました。
最初は、1人で座って考えるためだけに服を着替えるのは、少しばからしい気がしました。しかし間もなく、父の願いの本当の意味がわかってきました。
良い服に着替えることは、この30分の時間を大事に思わせる心理的な効果がありました。そして日毎に、考える時間である30分の大切さを悟るようになりました。この時間が、彼の生活に意味深い影響を与えたのです。
この青年は、とてものんきに無責任な青春時代を送ってきました。しかし、今は人生について真面目に考えています。彼の父親は息子の将来を心配していましたが、説教はしませんでした。考える時間を作るようにと頼んだだけです。物事を考えることによって、青年は自分の生活をどう変えれば良いかわかってきたのです。
人はだれでもその内部に、自分の生活を変える力を持っています。必要なのは、考える時間なのです。