人間ではどうでしょう。人間には三種類のストレスがあるそうです。まず、暑さや寒さ、騒音、悪臭などの物理化学的ストレス。飢えや過労、睡眠不足などの生物学的ストレス。不安や緊張、恐怖、興奮などの社会的ストレスです。これらのストレスは、ほとんどの場合、都会暮らしの中にあります。ストレスを解消するには、人と人の間に、ある程度の距離を置くことが必要です。
私たち夫婦は、夫の定年退職を機に、横浜の街から離れ、田舎での生活を始めました。何が変わったかと申しますと、第一に騒音とは無縁の静寂な暮らしになりました。聞こえてくるのは、森の中を渡る風の音、鳥の鳴き声だけです。第二に早寝早起きになりました。眠りが深くなり睡眠不足になりません。第三に精神的な緊張がありません。私は学生時代からの夢だった羊の世話を楽しんでいます。私たちは今、ストレスとは無縁の暮らしを送るようになったのです。都会から遊びにきた友人たちは、口々に言います。
「確かにストレスはないけれど、こんな田舎で、寂しくないの」
「そりゃあ、寂しいわよ。寂しいから、たまに友達と会うのが、嬉しいのよ」
私は中国の言葉を思い出していました。
朋あり遠方より来る、また楽しからずや