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ストレス解消法

岡野 絵里子

今日の心の糧イメージ

現代社会において、人が感じるストレスは数多くあり、様々に心身を苦しめるが、解消法もまた人間の数だけあるのではないかと思う。私の好きなストレス解消法は、冗談を言って笑うことだ。子どもの頃から、ウイットのある大人たちが周囲にいて、その笑いの中で育ったせいかもしれない。

昔のことだが、或る日、両親が揃って出かけることになった。だが父の支度が遅く、洗面所からなかなか出て来ない。母はイライラと怒り始めた。その日は、母方の祖母が訪ねて来ていて、洗面所へ父の様子を見に行ってくれた。「まだもう少し時間がかかるかもしれないわね」「まあ、一体何をやっているの?」母はまた腹を立てたが、祖母は面白がっているようだった。「鏡の前でね、一生懸命髪の毛を・・・並べているわ」父は髪が薄かったのである。母は思わず、ぷっと吹き出して笑った。緊張していた部屋の空気が和らいで、明るくなり、母はもう怒らなくなった。笑ったせいで、心がほぐれ、父が少なくなった髪を整えるのに苦労していること、労ってあげなければいけないことを思い出したのである。2人は仲良く出かけて行った。

人は不幸な時ほど、笑いを必要とする。笑いは、不幸に閉じ込められた状況をすぐ幸福に作り変えはしないが、少なくとも、幸福の方角に大きく窓を開ける。良き笑いは、人間の愚かさや至らなさを露わにしながら、誰も傷つけない。自分たちのありのままを受け入れて、何とかやっていく勇気を与えてくれるものである。笑うことで、人は日々の厄介なストレスをいなしていけるのではないだろうか。私自身もストレスが溜まって疲れた時など、ユーモアのこもった祖母の一言が、生きる楽しさの方向へ大きく窓を開けてくれたことを思い出す。