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人生を変えた言葉

三宮 麻由子

今日の心の糧イメージ

全盲の学生として初めて上智大学に入学したとき、先生方が私を招き、学生生活について大学がどんなサポートをすれば良いかを話し合う機会を作ってくださいました。点字受験で合格したものの、授業やサークル活動、食事や掲示板情報の確保など、私も大学もすべてが手探りだったからです。

掲示板は友達に読んでもらう、語学のテストはブック型のワープロを学校におかせていただき、それを使って答案を書く、学内の移動は、母と何度か歩行訓練をすればできるようになる、と、課題は次々とクリアされていきました。不安でいっぱいだった私が、これで何とか大学生活を営めそうだとほっと胸をなでおろしたとき、先生が静かに言われたのです。

「あなたの目的は、フランス語とフランス文学を勉強することです。ほかの友達と同じやり方で勉強する必要はありません。だから、みんなと同じであることにとらわれないように。学ぶという目的を果たすために、臨機応変に工夫していきましょう」

私は一瞬びっくりしました。盲学校時代から、「目の見える人と同じにできるようになる」ことをずっと目指してきた面があったからです。

先生は、そんな私の気持ちをすぐに見抜かれたのでしょう。勉強の仕方は一通りではないこと、その方法は自分で見つけるしかないことを、このとき私は学んだのです。

こうして、私の人生観は大きく変わり始めました。自己実現において、大切なのは「みんなと同じにできる」ことではなく、自分のやり方で目的を果たすことだと確信したからです。こうして、スライドが見えなくても絵本が読めなくても、私は言葉で勉強を重ね、フランス文学を楽しみました。そしていつも、突破口はきっと見付かる、とどこかで信じるようになったのです。