演出が担当で、是非取り上げたいと思った本が、ジャン・アヌイ作の「ひばり」でした。ジャンヌ・ダルクの裁判劇ですが、当時は禁書扱いの内容と思われていました。学長と担当のシスターに面接して演出意図を説明し、許して頂いた貴重な公演でした。
奇跡を信じないのかと追求する検事に対し、「本当の奇跡というものは、奇術とか曲芸であってはならないと。真の奇跡は、天国の神さまが喜んで微笑まれるような奇跡、それは人間がひとりぼっちで、神さまから与えられた勇気と知恵とでもってなしとげるはずですわ。」と答えるジャンヌ、また「神様、あなたは最初のうち、ご自分がお黙りになるときには、聖ミカエル様を通して話かけてくださいました。そのときこそ、私を一番信頼してくださったのです。何もかも一人でやれとおっしゃったそのときこそ。」という火刑台へ送られる前のジャンヌの決意のセリフに、私自身の信仰に対する姿勢を正された思いで、この言葉が演出の動機になりました。
プロテスタントの幼稚園から始まり、カトリックの大学生活と、神様を感じつつも素直になれない自分自身に、半ば信仰をあきらめかけていた私でした。神様の御手にゆだね、思う存分一人でやって良いということばに背中を押され受洗できた、人生を変えた言葉です。