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岐路に立つ時

シスター 山本 久美子

今日の心の糧イメージ

これまでの人生において、私が一番大きな岐路に立ったのは、将来について識別し、修道生活の道を選び取った時の体験です。

それまで、私は、多くの人たちが良しと考える、極々平凡な道に従って進んでいくだろうと漠然と考えていました。しかし、大人になって、自分の将来の道を具体的に考えた時、「これで本当にいいのだろうか」という疑問にぶち当たりました。そのまま、何となく親や周りの人の期待通りの道を歩むこともできましたが、心の奥深いところで、「ノー」と叫ぶ私がいたのです。何よりも、ずっと心の中に抱いていた、修道生活を生きたいという正直な気持ちに背くことができませんでした。

しかし、特にキリスト者でない家族の動揺や悲しみを思うと、心が痛み、不安と迷いに心が揺さぶられる思いを味わいました。そんな揺れ動く複雑な気持ちを抱えながらも、日々、一心に祈っていく中で、私は神様の声なき呼びかけを確信しました。心静かに「どんな障害があっても、神様が望まれるなら実現するでしょう」と、すべてを神様に委ね、自然に心が穏やかになっていく、そういう心の動きを自分のうちに体験したのです。人間的に見れば、八方塞がりで実現不可能な道だと思わざるを得ない状況の中で「神様にとって不可能なことは何一つありません。」(ルカ1・37)そう信じられる自分が不思議なくらいでした。

今も私にとって、この時のような自分の心の動きを味わうということが、岐路に立つ時の選びの指針となっています。迷いや不安があったとしても、心の深みで私は、本当はどのように感じているのか・・・それは真実の私を支えてくださる神様からのメッセージでもあると私は信じています。