私は地図や方角がわからないという弱点のおかげで、友人たちから貴重な解決法を教えてもらったような気がしている。すなわち、迷った時は、自分がどんな場所にいるのか、そしてそこから見えるものは何かを知る、ということである。
或る時に、詩人団体の役員になって欲しいというご依頼を頂いた。多くの時間と労力を捧げなければならない、実は大変な役割なので、私は引き受けたくない。だが、お断りするのも難しい。どうしたらよいか困ってしまった。それでまず、自分がどんな場所にいるのかを考えてみた。経験を積んで、多くの仕事が出来る年齢になっていること、だが作品に集中するべき大事な段階だと思っていること。見つめ続けているうちに、自分の得にならないことはしたくないと考えている自分が見えた。嫌な仕事を押し付けようとしているのではなく、私に期待して下さっている人々が見えた。温かい厚意に包まれながら、身勝手な小さい自分・・
工夫すれば、時間は生み出せるだろう。むしろ助け合うことで増えるかもしれない。苦しみがあっても、それは善き時間なのだ。私は承諾の返事をした。善き時間がその瞬間から始まったようだった。