数年後に姉は富山県に嫁ぎましたが、遠く離れた地で環境が変わり、陸に上がった魚のように苦しんでいました。
そんな姉を変えたのは我が子の誕生でした。生まれて間もない姪が遠くから車で運ばれ、実家の居間に寝かされていた朝の光景を、私は生涯忘れないでしょう----。窓越しに朝日の射す小さな布団の上で、姪が小さい手足を嬉しそうにぱたぱた動かす姿を見た時、(人は自らの命を歓ぶために産声を上げるのだ...)と感じ、居間に集まった祖母・父・母と私で姪を囲み、皆で頬をほころばせた時、(本当は誰もが愛されるために生まれてきたのだ...)と感じました。
姉の懸命な子育てにより姪はすくすく育ち、絵を描いても作文を書いても表彰される優秀で快活な女の子に成長しました。
昨年の冬、そんな姪にとって大きな試練が訪れました。模擬試験では高得点でしたが、不運にも憧れの中学校に入れなかったのです。失意の姪に私はある本を贈り、手紙を添えました。「君の人生はまだ長い。回り道をして経験する全てを栄養にして、君は輝く人になるでしょう。(前向きに)という言葉は昔、ママがおじさんに教えてくれた言葉です」。
今は元気に地元の中学校へ通っている姪に、将来本当の岐路が訪れた時----この試練を糧にして、必ず真の道を見出すでしょう。