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天の国の鑑

土屋 至

今日の心の糧イメージ

天国についてのこんな話をミサの説教で聞いたことがあります。私の想像をまじえながら記憶を呼び起こしてその話を再現してみます。

ある男が死んで天国に行って、門番のペトロに案内してもらいました。天国には数々の素晴らしいものがあったのですが、窓はなくドアも一つしかない大きな蔵が目につきました。ペトロに「あれは何ですか?」ときくと、「あれだけは見ないほうがいい」というのです。そういわれるとますます見たくなるものです。その男はペトロの制止も聞かずにその蔵のドアをあけました。

その蔵には、名前と日付が書かれ、赤いリボンで結ばれた白い箱がぎっしりと積まれていました。「私のものもありますか?」ときくと「ありますが、見ることはおすすめできません。」というのですが、その男は蔵中を駆け回ってついに自分の箱を見つけ、赤いリボンをはずして中を見ました。

そして深いため息をついたのです。ペトロは「だからやめときなさいといったのです。私はあなたのようなため息をこれまで何度聞いたことか。」と悲しい顔つきでいいました。

そこにはなにが入っていたのでしょうか? その男が生きているときにおかした過ちと罪のリストだったのでしょうか?いえいえ、天国にはそのようなものはありません。では何があったのでしょうか?

 

そこには神さまがその男に与えようとしていた恵みと祝福の贈り物がたくさん入っていました。神さまがその男に贈り物を与えようとしたのに、要らないといって拒否したり、気づかなかったり、無視したりして、その男が受け取るはずだったのに受け損なった贈り物の数々だったのです。

私も天国に行ったら、きっと、その箱を開けてため息をつくことでしょう。