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天の国の鑑

小林 陽子

今日の心の糧イメージ

天の国のひと、といえばすぐ思い浮かぶのは九州は小倉在住のNさんとそのお姉様のことです。

Nさんだけでも、20代からその生涯のほとんどを、足の不自由な神父様の、文字通り手足となって仕えてこられたのですからすごいのですが、彼女の姉なるかたのお話も、お会いしたことはないものの、こんなかたが、この世にはおられるのだなあ・・と忘れられません。

時々、Nさん宅に電話を入れると、お姉様が出られて、その声はNさんにそっくりなのでよく間違えたものです。細くやわらかなソプラノで歌うようにほがらかに話されました。

ちょっと言葉で説明できない不思議な魅力。そこに居て下さるだけで、どんなにカッカとしていたり、不平不満を呟いている人でも、Nさん姉妹の微笑みに出会うと、たちまちうるうると心がなごんでしまう・・・。

みたところ、ごく「普通のおばさん」です。Nさんは神父様のお世話をしながら、幼稚園の先生も務められ、子ども達とそのお母さん方からも慕われていました。ごく自然な感じで。

お姉様は長い闘病の末、両足の膝から下を切断されました。それでもその微笑みはまったく変わらず、周りの人達を励まし続けたそうです。

やがて最後を自宅で迎える為に退院されたのですが、院長先生をはじめ、医師、看護士、病院のスタッフの人達が全員そろって、

「ありがとうございました!」と見送られたと聞きました。

長いこと姉妹お2人で仲良く暮らしていらしたので、さぞお淋しくなられたでしょうと伺ったら、そのお返事は、

「あら、いいえ!だってイエスさまもご一緒に、姉もいつもここにいてくれますもの。今までよりずっと身近に、ね」

と、いつもの明るくほがらかなソプラノで。