そのあと少し真顔になり、「じゃばってん、天国へ行くとはむずかしか。ラクダが針の穴ば通るぐらいむずかしかっちいうけん、とてもじゃなか、すぐには天国には行ききらん。かあちゃんはまずれん獄で暮らすっち思う。れん獄も火が燃えとるとよ。熱かとっちよ。じゃけん、この世におる人どんが、れん獄のれいこんのために御ミサばたててあげんばよ。御ミサがたってる間、冷たかしずくが落ちて来て熱さからまぬがれるけんね。じゃけん、かあちゃんがもし死んだら、御ミサばまめにたててくれろよ」と私たちに頼むのだった。
「とにかくさ、天国へ行くには自分の心の鑑ばきれいに磨くことたいね。曇らさんごとすることたいね。子どもの頃は、心に曇りがなかけん、天国がそのまま映るとよ」
私も68歳になり、年々、心の鑑が曇って行っているのではないかと思う。とにかく、一にも二にも心の鑑を磨く努力を続けたい。