先生はサン・ピエトロ大聖堂にあるミケランジェロ、20代の作品である『ピエタ』を見て感銘を受け、その後、イタリアにミケランジェロの残り3つの未完の『ピエタ』を見に行った。先生の研究室には、最初に見た『ピエタ』のご像が本棚に飾ってあり、壁にはミケランジェロが最晩年に製作した『ロンダニーニのピエタ』のポスターが貼ってあった。いつも先生の視界には、この2つの『ピエタ』はあった。
猿橋先生は2011年3月11日の東日本大震災における福島原発の事故を知らないまま、2007年に亡くなられた。今こそ、私たちは、科学者、哲学者、神学者をはじめ、あらゆる分野の人々、そして市井の人々が、次の世代を担う青少年が希望を持てるような世界を造るために、大きなうねりとなるように心を合わせる時が到来したのだと思う。