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マリア様の役割

シスター 菊地 多嘉子

今日の心の糧イメージ

愛する聖母マリアについて語るとき、常に思い出すのはリジューの聖テレーズが「マリアに捧げた詩」の中で詠っている言葉です。

「聖母は私たちと同じように、信仰の旅路、信仰の暗い夜を歩まれました。」「私があなたの子であると信じるのは、そんなに難しくはありません。あなたも、苦しみと死を味わう人間でいらっしゃいますから。私のように・・・。」

かつて、マリアの特権が強調され、神々しい画像を仰ぎ見る人々に、自分たちとはかけ離れた存在であるような印象を与える時代がありました。テレーズは、福音書の中にマリアの姿を探します。神のお告げを受け、「私は主のはしためです。み言葉どおりこの身になりますように」(ルカ1・38)と答えたマリア。エリザベトを訪れ、マグニフィカトを謳ったマリア。救い主がお生まれになった夜、羊飼いの訪れを心に納めて思いめぐらすマリア。見失った十二歳のイエスを探すマリア。最後に、十字架の下に佇み、死刑囚として死んでゆくわが子をみつめるマリア。このときです。イエスがご自分の母をヨハネに託したのは。「これは、あなたの母です」と。(ヨハネ19・27)

マリアは最愛のわが子イエスが御父のもとに帰るその時に、全人類の母となる使命を託されたのです。「マリアのまなざしは、ある意味で『子を産む母のまなざし』でした。なぜなら、マリアは御子の受難と死にあずかっただけではなく、愛する弟子という新しい子を与えられたからです。」

マリアを母と慕う私たちの幸せを、ふさわしく言い表す言葉があるでしょうか。この世に生きる私たちの悲しみも、喜びも、すべて味わわれた御母が私の母となって、常に寄り添っていてくださるのです。