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マリア様の役割

阿南 孝也

今日の心の糧イメージ

本校のクリスマス劇の中で、聖母マリアは大切な役です。天使ガブリエルによる受胎告知の場面でも、また最終幕で羊飼いや学者たちの訪問を受ける場面でも、ブルーのベールをかぶったマリアは、ライトに照らされて、清楚で気高い姿を見せています。

何年も前のことでした。名画集の中に、白く輝く栄光に満ちたマリアの姿を見つけた生徒が、真っ白で光沢のあるベールに変更したいと言いだしたのです。高校生たちのスタッフ会議では賛否が分かれ、結論が出ませんでした。そこで、仮のものを作って、翌日の舞台練習で試してみることになったのです。するとどうでしょう。白く輝くベールに包まれたマリアは、舞台上でスポットライトを浴びると、光を反射しすぎたせいでしょうか、その姿がほとんど見えなくなってしまったのです。もちろん、全員一致で元のブルーのベールを使用することになりました。

本物のマリア様も同じではないでしょうか。女神であるかのように祭り上げ、讃え敬ってしまうと、まばゆすぎて、人としてのお姿が見えなくなってしまう恐れがあると思うのです。人類史上に立ってくださった神イエス・キリストのご生涯に寄り添い、私たち人間の代表として、神の救いのわざに誰よりも深く関わり、大きな役割を果たされたのがマリア様でした。人間にはとうてい理解できないできごとをも心に留め、弟子たちが一目散に逃げ去ったときですら、わが子の十字架の足もとに留まり、みことばを聴き、私たちに伝えてくださったのがマリア様でした。

ローマとユダヤの二重の支配の元、ナザレという辺境の地で、夫ヨゼフと力を合わせて、実生活の悩み苦しみの中で、神の子イエスを育て、共に生きてくださったマリア様を、心から敬愛してやみません。