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マリア様の役割

末盛 千枝子

今日の心の糧イメージ

アガサ・クリスティーが「ベツレヘムの星」という短編集のなかで「島」という話を書いています。十字架上のキリストに言われた通り、ヨハネの面倒を見て老いていくマリア様のことを書いています。

気難しく、勉強ばかりしていて、時には、気を失ったりもするヨハネの面倒を見ることは大変でしたが、ヨハネは一生懸命、神様の言葉を書き記そうと苦しんでいます。マリアは自分の出来る限りのことをしています。その貧しい島の子どもが、『おばさんにはもう一人息子がいて、その人は、悪いことをして、死刑になったんだって』というのです。彼女は、自分は無学な女だから、何もわからないと言いながら、「ちゃんと知っているはずの人たちが息子を罪人だといったのです」と言い、何が正しくて、何が悪いのかわからないと思いながらも、いろんなことをなつかしく思い出します。子どもを連れてエジプトに逃れたことや、カナの結婚式のことなどです。どれもこれも彼女には大切な思い出です。

ある月の夜、見慣れた粗末な漁船が近づいてくるのが見え、あの子が迎えに来てくれた、とマリアは思うのです。舟の方に走って行くと、3人の男が乗っていて、そのうちの1人が舟を出て、海の上を歩いて近づいてきます。マリアは、しっかりと息子の腕に抱きとめられ、『あなたに言われた通りにしましたよ、ヨハネの世話をして』と言うのです。すると、息子は『あなたは私の頼んだことは何の手落ちもなくしてくださいましたよ。さあ、一緒に帰りましょう』と言って、一緒に海の上を歩いていき、マリアはいままで起こったことを全部息子に聞いてもらうのです。舟には、シモンとアンデレも乗っていました。私はこの話が大好きなのです。