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マリア様の役割

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

子育て中のお母さんたちから、「子どものことで忙しくて、自分のやりたいことができない」という嘆きの声を聞くことがある。本当は、自分だって社会に出てみんなの役に立つような仕事ができるのに、子どもがいるから何もできない。そのように言う人もいる。

よりよい社会を作るために、自分も何か役割を果たしたいという気持ちは尊い。だが、会社やNGO、ボランティアグループなどで働くことだけがよりよい社会を実現するための方法なのだろうか。

料理や掃除、洗濯といった日々の家事は、一見、社会を変えることとは関係ないように思える。毎日、同じことの繰り返しで、後に何も残らない虚しい仕事に見えてしまうのだ。だが、そんなことはない。お母さんが真心を込めて料理や掃除、洗濯をするなら、その中に込められたお母さんの愛は、必ず家族の心の中に残る。

そして、その愛は家族の行動を確実に変える。お母さんの手作りのおいしい料理を食べ、清潔な部屋で家族とゆっくり過ごした日の翌日には、お父さんも子どもたちも、きっと優しい気持ちで周りの人たちに話しかけることができるだろう。料理や掃除、洗濯に込められたお母さんの愛は、家族の心に優しさを生み、笑顔やいたわり、思いやりに満ちた社会を実現してゆくのだ。

「大切なのは、大きなことをすることではありません。小さなことに大きな愛をこめることです」とマザー・テレサは繰り返し人々に言い聞かせた。よりよい社会を実現できるのは、小さなことに込められた大きな愛だけだと知っていたからだろう。

聖母マリアは、自分では大きなことをしなかったが、マリアが愛情込めて育てた子どもイエス・キリストは、全人類を救い、世界を変えた。

聖母マリアの模範に倣いたい。