当時、学生生活を終えてまもない私は、アルバイトをしながら自分が本当に生きる道を探していました。家の目の前にあるモンタナ聖母訪問会の聖堂にいたシスターにその想いを伝えると、週に一回〈私は誰か〉というテーマで個人的に講義をしてくれることになりました。
「人間の魂の深い所には(実在)というものがあり、その賜物を生きることは、神様が一人ひとりに望んでいることなのです」。そう静かに語るシスターは、詩人になる志を家族に告げても賛同されなかった私に遠藤文学の講座の案内を手渡しました。その後、シスターとの対話を重ねるうちに、私の往く道はおぼろげながらも見えてきたのです。
昨年末、私は想い出のカトリック大船教会で、ダウン症を持つ息子・周について『我が家に天使がやってきた』という講演を行いました。妻と息子に贈る『夢の木』という詩を朗読した後、深く頭を下げ、会場の皆様の温かい拍手に包まれた時、私の人生の舞台が幕を開けたと確信しました。(この一度きりの人生は、天が書き記してゆく物語なのだ・・・)と。