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古い自分を捨てる

末盛 千枝子

今日の心の糧イメージ

古い自分を脱ぎ捨てる、とはなかなか難しいことだと思います。でも、たぶん自分で決めるというよりも、何かの具合で、すこし別な角度から自分を見るとか、別なことを始めるとかしか、困難な情況から抜け出ることが出来ないということがあるような気がします。それは仕事上の失敗だったり、人間関係で出会う困難だったり、いろんなことではないでしょうか。

以前評判になったテレビドラマの中に何度も出て来て、とてもよい言葉だなあと思っていたのは、厳しいけれど、とても素晴らしい外国人の校長先生が、主人公に向かって何回もいう言葉でした。それは「あなたの人生において最上のものは過去にあるのではなくて、未来にあるのです」というような言葉だったと思います。

曲がり角に来た時、私たちはいままでが良かったと思えば思うほど、その角を曲がったらどうなるのだろうかと心配に思います。でも、あの校長先生が言うように、私たちは自分の最上の部分をまだ見ていないのです。最上の部分というのが、経済的なことであったり、容貌であったりということでないのは、もちろんです。ただ、私たちに言えるのは、その曲がり角の向こうに現れる自分の新しい世界を大切に受け入れようとすることではないでしょうか。もちろん困難を伴うとしても、です。そして、最上のものが現れるのではないでしょうか。

トルコの詩人ナーズム・ヒクメットが言ったように「私たちは、もっとも美しい海をまだ渡ってはいないし、もっとも美しい子どもはまだ大きくなってはいない。そして、もっとも美しい日を私たちはまだ見てはいない。それにあなたに伝えようと思ったもっとも美しい言葉を私はまだあなたに伝えてはいない」のです。