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古い自分を捨てる

今井 美沙子

今日の心の糧イメージ

私は外見が華やかに見えるそうで、そういう先入観で見られがちであるが、よくよくつき合うと、そうではなく、逆に古風な面が多いので驚く人は多い。

そうなのである。私は五島列島でカトリック信者の両親に育てられた。

しかも両親が父が明治37年、母が明治44年生まれなので、他家に比べたらずいぶん古風に育てられた方だと思う。

衣食住はすべてに於いて、人が羨ましがるようなことはしてはいけないというのが鉄則であった。何しろ父母の視点は、2000年前の聖家族がこの世におられた頃にあるので、何事に於いても清貧、謙遜、忍耐の精神をもって暮らすようにとしつけられたのである。

18歳で大阪へやって来て、自分で働くようになり、ボーナスなどいただいても、華美な洋服や装飾品などには目がいかず、余裕があれば、たとえ小額でも寄付する方を選んだ。

その思いはその後50年間、変わらない。

今もってワープロは使わず、一字一字手書きで原稿を書いているし、携帯電話も、銀行や郵便局のカードも一切持たない。

鍋で御飯を炊き、洗濯機も二槽式。

現代の一般の人とはかけ離れた生活をしているのである。

そんな私のことを「古いわ。そんな古い考えを捨てて便利に暮らしたら」と忠告してくれる人もいた。しかし、2011年の東日本大震災の頃より、私に対する評価が変わってきた。

「美沙子さんのこと、古い古いといってごめんね。実は時代を先取りしてたんやね。もう便利すぎる生活より、日本人は少し後向きに生きた方が逆に新しい生き方のような気がする」といってもらい出したのである。

父母のしつけがほめられたようで嬉しい。