出産のときにできた傷が化膿して大きな穴が開いていたのでした。すぐに手術するべきなのですが、出産後まだ日が浅い私に手術は無理だと判断され、薬で治すことになりました。1か月後、診察を受けると、傷は少しだけ塞がってきていました。
「退院して、様子を見ましょう。」
退院は嬉しい。しかし、体力が回復したら手術をしなければと思い、気持ちが沈み込むのでした。
長男を抱いた私は、ようやく家へ帰ることができました。1か月ぶりの我が家です。リビングに入ると、窓から明るい光がさんさんとさしていました。
「いつの間にか、こんな季節になっていたのね。」
リビングに続いて作られたパーゴラには、無数のピンクのバラが満開に咲き誇っていました。
「なんて美しいのでしょう」涙と笑みが自然にこぼれ落ちました。
それからです。弱っていた私の体力がみるみる回復したのは。母乳も良く出るようになり、息子も肥ってきました。
退院1か月後の診察で、傷が完全に塞がっていることがわかりました。手術は必要なくなったのです。
あの日、私は古い自分にさよならしたのだと思います。そして、明るく前向きな新しい自分に出会ったのです。そのきっかけを作ってくれたのは、ピンクのバラでした。ありがとう。私はバラに感謝したのでした。