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まわり道をしても・・・

新井 紀子

今日の心の糧イメージ

北海道に移住して5年が経ちました。最初の冬のこと、村の掲示板に張り紙が出ました。

「参加者募集。今度の日曜日、凍結した大沼湖をスキーで渡ります。奮ってご参加ください」

湖をスキーで渡るなんてそんなことができるのかしら。私たち夫婦が見学に行くと、村から10人ほどの人々が集まってスキーをはき対岸へ向かって出発していきました。それはカントリースキーというもので、森や林の中を歩くように滑ることができるスキーなのです。アルペンスキーと違って、靴のかかとが離れているため歩きやすいのです。

翌日、今度は森の中を颯爽と走っているスキーヤーに出会いました。 「キタキツネを見つけに行きましょう」

雪の上をスイスイと走る姿に、私たちは憧れました。そうだ、私たちもカントリースキーをやってみよう。

早速、スキー道具をそろえました。その日の積雪は1メートルくらいでしょうか、我が家の玄関から森の中へ出発しました。簡単だと思っていたのですが、3歩も歩けません。歩こうと思ったら、ひっくり返ってしまいました。右足のスキー板と左足のスキー板が別別の方向に滑っていくからです。どうしてもスキー板をコントロールすることができません。私たちは深く反省しました。

足の筋肉を鍛えるところから始めなければ・・・。

夫は柔軟体操と朝夕100回のスクワットをすることにしました。私は水泳教室に通い始めました。1年、2年と通う内に、泳ぐ距離もだんだん増えていきました。

4年の歳月が流れて、昨年、大沼湖の縦断5キロに初めて挑戦してみました。見事完走です。私たちは手を取り合って喜びました。夢のようです。

柔軟体操やスクワット、水泳教室は、大きなまわり道のように見えて、実はそうではなかったのです。