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精神的向上

ハヤット 神父

今日の心の糧イメージ

人間は、自分が生まれてくる歴史上の年代を選ぶことができません。何世紀に生まれたいかと誰も聞いてはくれません。しかし、私たちは、21世紀の現代に生きている人間として意義ある人生を送る責任があるのです。

もちろん、今世紀に生まれたという事実は有意義なことです。人類は常に進歩を続け、各個人も進歩するのですから、私たちは昔の人々の生活とは、まったく違った暮らし方をしています。

先祖は交通機関として馬を使っていましたが、現代では自動車や電車、飛行機などで移動します。大昔の人は、なかなか勉強できませんでしたが、今、多くの人が何年間も学校へ行きます。

娯楽も昔は自分で考え出さなければなりませんでしたが、今ではラジオやテレビ、パソコンなど、スイッチ一つで簡単に楽しめるものがあります。

昔の人が恐れていた病気の多くも、医学の進歩のおかげで治るようになりました。私たちは、昔の人の研究と努力のおかげで、この21世紀の恩恵に浴しています。先祖の知識、発見、発明、芸術、文化などを受け継いだわけです。したがって、これらの遺産を守り、より立派なものにして次の世代に残すのが、現代に生きる私たちの義務だといえます。

このように社会は次第に進歩し、私たちは一つの世代として、その進歩の一翼を担っています。しかし、精神的な進歩は別のことで、それは各個人の努力で達成されるものなのです。私たちは一世紀前の人より豊富な知識を持っていますが、必ずしも、その人より「徳」のある人間だとはいえません。

徳というものは、知識や文化のように受け継ぐことはできませんし、次の世代へ残すこともできません。徳は、人が生まれる年代や進歩に関係なく、各個人が神の助けを得て、自分自身を向上させて得られるものなのです。