▲をクリックすると音声で聞こえます。

人生は学び

末盛 千枝子

今日の心の糧イメージ

本当に不思議なことですが、若い時に読もうと思っても、どうしても読みすすめられなかった本が、今はとても気持ちよく、ほとんど楽しいとさえ思いながら読むことが出来るのを感じています。

どうしてかなと思うのですが、これは、年を取って、楽しいことも辛いこともいろいろなことを経験し、いろんな人の人生を知り、もちろん自分についても、良いことも嫌なことも見ることが出来るようになっているからではないかと思います。そのために、他人の人生に対する想像力が豊かになって来たということではないかと思います。

人はそれぞれ、他人の目には見えないことを悩んだり、苦しんだりして生きていると知るようになったからでしょうか。私の目にはこのように見えるけれど、その人自身にとっては、すこし違うのかもしれないと思うことが出来るようになって来ているのでしょうか。

そのように考えた時に、昔、あの人が紹介してくれて、とても読めなかった本が、今は読める、ということはほとんど感動的です。快感でさえあります。人生は最後まで、何かしら私たちに新しい経験を与えてくれるということではないかと思います。きっと、いつでも未知のことが目の前に横たわっているのでしょう。そして、私たちは、そのことを考えるとき、人に対していくらか寛容になっているのではないかと思います。

これは私にとっては、とても素晴らしい発見でした。人を許すということなしに、平和に生きることは出来ないと思いますが、例えば、亡くなった人が教えてくれた本をずっとたってから、本当に嬉しく読むことが出来ていると、まるでその人と会話をしているようにさえ思います。