それから成長と共に、アイスクリームは特別な食べ物ではなくなった。自分だけに都合のよい天国も存在しないのだと考えるようになって、年月が過ぎた。
だが大学生になって1年目の時である。いつもより少しぼんやりして講義を受けていると、誰かが「神様とか天国とか・・」と腹立たしそうに言うのが聞こえた。大学には、宗教には無縁で、また批判的な学生も多かったから、聞き流したつもりだった。が、心が反応したのだろう、何かを投げ渡されたかのように、ぽん、と5歳の時に願ったことを思い出した。そして次の瞬間、閃くように、その願いは口に出すより先に叶っていたのだということがわかった。
たとえ僅かであったとしても、私も生まれた後、大人たちに抱っこされてきたのである。それは神様の膝であった。私は、天国がどこにあるかわかった気がした。人は敢えて声を上げなくても、その時に気づかなくても、あらゆる恵みに包まれているのだと思われた。
答えはずいぶん遅れてやって来た。明るい春の教室の中で、その時がキリスト教と私の出会いであった。