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健康の秘訣

堀 妙子

今日の心の糧イメージ

弟から突然の仕事場への電話。絶句。母が肺がんの末期で、余命は半年から1年。新幹線で実家に戻り、弟から主治医に言われたことを聞いた。「高齢であるため手術、抗ガン剤、放射線治療は無理。息が苦しくなったら入院。それまでは自宅待機」とのこと。

帰京するとデーケン神父の「生と死を考える会」に行き、もう何の治療もできない人との関わり方を伺った。「ハグ・セラピーがあります」と言われた。抱きしめるだけ!実家に帰る度に、1日に何回も母を祈りながら抱きしめた。心なしか母の顔色がよくなっていった。

この頃、看病と仕事の両立は無理と判断し、55歳で会社を辞めた。会社を辞めてしばらくすると主治医から弟と私が呼ばれ、母のがんが小さくなったと言われた。

母が回復している喜びと同時に、私は自分自身が無職であることが身にしみた。独身で仕事が生きがいの私にとって、無職は耐え難いものだった。不安定な状態にいる時、恩師から電話があり、学生になったらと言われた。私は看病だけではない、受験勉強のために明るくなった。日々、看病にも勉強にも喜びと集中力があった。

無事、上智大学神学部三年への編入学試験に合格して、入学式を迎えた。夏休みの頃になると母のがんは半分になっていた。とはいえ、母の病気はいつ急変するかわからないので、喪服を買った。

卒業する頃には主治医に「完治したと言える」と告げられた。喪服は卒業式で着た。また半年後には「完治した」とほほ笑みながら言われた。

「健康の秘訣」は、1にお祈り、2にハグ、3に喜びであると思う。突然、母の病気を宣告され苦しんだけれども、その中で出来ることを探し、喜んで生きる時、母には祈りの生活、私にはペンの使徒職が与えられた。