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クリスマスのおとずれ

湯川 千恵子

今日の心の糧イメージ

アメリカの大学に留学中の2002年のクリスマス。11月中旬から毎日のように見知らぬ家庭婦人からクリスマスカードが届き、その年は57通にもなりました。カードには「外国からの留学生はクリスマスも一人で淋しく勉強も忙しいから、少しでも心温かいクリスマスを!」という優しい手紙と、厚手の靴下やスーパーの買い物券などが入っていて、連日、マイナス14〜5度の厳寒なのに、私の心はホコホコと温められました。

事の起こりは、「P・E・Oシスターフッド」という団体の会員婦人たちが、会報に載った「女子大学院留学生奨学金受給者」の一覧表に、還暦過ぎた日本人留学生の私の名を見て励まして下さったのです。ちなみにその年の受給者は172名で、国籍は75カ国。P・E・Oは博愛的教育団体の略です。

この団体は1869年、7人の女子学生が「世界平和は女子教育と相互理解から」というスローガンを掲げて設立。その壮大な夢に共鳴した婦人たちの支部が全国に広がり、今や全米各州とカナダに千以上も出来ました。各支部は20人程の家庭婦人の集まりですが、バザーなどの収益金を本部に送り、奨学金の支援活動を続けているのです。

私はアメリカで学んだ事を故国で生かすために、このユニークな奨学金の受給者となり、翌年五月に開かれたミシガン州全体の支部大会にゲストスピーカーとして招かれて、あのクリスマスカードを送って下さった方々に直接会って感謝を述べ、交流を深めることができました。

「世界平和は女子教育と相互理解から」というスケールの大きい夢の実現を日常の中で支援している彼女たちの爽やかな笑顔が、毎日カードを受け取って暖められたあのクリスマスの感動と重なって今も忘れられません。