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見知らぬ人への親切

ハヤット 神父

今日の心の糧イメージ

 私がベンチに座っていると、隣の人がタバコを吸い始めました。やがてそのタバコの煙が私の方に流れていることに気付いた彼は、すぐ私に謝ってタバコの火を消しました。

 私は「気になりませんよ」と言いましたが、彼は微笑んでもう吸おうとはしませんでした。私の心はあたたかくなりました。彼が私を気づかってくれたことが、嬉しかったのです。

 またある日、私は、友人が入院している病院を探して車を走らせていました。初めて行く町でしたので、学校帰りらしい高校生たちに、病院への道を尋ねました。彼らはこころよく教えてくれましたよくわかったつもりでしたが、間違った道に入り、遂には行き止まりになってしまいました。そこで、仕方なく元の大きな道に引き返してみると、驚いたことに、さっきの高校生たちが、まだ立っていました。車が間違った方へ行くのを見て、引き返してくるのを待っていたと言うのです。彼らはもう一度ハッキリと正しい道を教えてくれると、笑いながら手を振って、見送ってくれました。

 ベンチの男性やこの高校生に、もう一度出会うことはないかもしれません。しかし、彼らの損得抜きの気遣いや親切は私の人生に何かを与えてくれました。

 見知らぬ人との偶然の出会いは、取るに足らないことと思われがちです。たいていの人は、見知らぬ人の気持ちを考えず、時には失礼なことさえ平気でしてしまいます。「この人には二度と会わないだろう。気にする必要があるだろうか?」と考えます。しかし、本当の親切の意味を知る人は、違った態度をとります。

 見知らぬ人との出会いは、"報いを期待せずに善いことをする"ことが出来る、またとないチャンスだと考えて、親切な行いをするのです。