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自然に親しむ

崔 友本枝

今日の心の糧イメージ

 私の故郷は北海道です。一年のうち、半年間は輝くように美しい雪景色を見て育ちました。真っ白な雪をかぶった赤いナナカマドの実と青い空はなつかしい風景です。それに、夏は短く、急激に気温が下がるので紅葉が実に見事なのです。裏山が、ある日突然、あでやかな花を集めたように様々な色で埋め尽くされるのを毎年、驚きをもってみつめていました。

 北海道の花の季節は五月。待ち構えていたように梅、桜、ヒヤシンス、水仙、チューリップが一斉に咲き出します。

 自然には独自のリズムがあり、人間の都合に合わせることも振り回されることもありません。北海道の人は天候についてあまり文句を言いません。人が自然に合わせ、ゆったりと生きています。自然をコントロールしようとしてもできないことを知っているのです。

 それは健全な感覚だと思います。決してかなわない巨大で神秘的な相手と対決せず、包まれながらその賜物によって生きていく。このような自然への畏敬の念は「神への畏敬」に近い、謙虚な姿勢だと思います。自然に親しむと神様とも親しくなれるような気がします。

 私の住んでいた田舎は非常に静かで、小鳥のさえずりや風の音は友達の声のようでした。静けさの中では心の声に耳をすますことも容易です。

 先日、心騒ぐ出来事があった時、自室の窓を開けてお祈りをしました。春の柔らかな風と小鳥のピチュピチュという声、どこからともなく漂ってくる花の香りをかぐと、気分がぐーんとよくなり、落ち着いてきました。自然は神さまの作品ですから、何かを優しく語りかけ、バランスを失っている部分に調和をもたらしてくれるのです。