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自然に親しむ

片柳 弘史 神父

今日の心の糧イメージ

 わたしの趣味は写真を撮ることだ。修道院に入ってしばらくのあいだ中断していた趣味だったが、あるきっかけから再びカメラを手に取るようになった。

 福岡の修道院に住み、学校で教員をしていたときのことだ。慣れない教員生活に疲れ、ふさぎこみがちな私を心配して、ある日、先輩の神父がわたしを能古島という島に連れて行ってくれた。福岡から船で十分ほどのところにある小島だ。島ではちょうど真っ赤なツツジが満開を迎え、さまざまな鳥たちの鳴き声が新緑の森にうるさいくらい響いていた。このときくらい、自然の美しさに感動したことはない。まるで、天国に足を踏み入れたような気分だった。あまりの美しさに時間を忘れて島を歩き回っているうちに、心に重くのしかかっていたさまざまなことは、どこかにすっかり消えてしまった。

 

 帰り道で私は「どうして今まで、自然が持つこれほどまでの美しさに気づかなかったのだろう」と心の底から思った。そして同時に病気などで家の外に出ることができない人や、身の回りにある自然の美しさに気づくことなく、考え事をしたりおしゃべりしたりして自然のそばを通り過ぎてゆく人たちにも、この美しさを伝えたいと思った。そこで、しばらく使っていなかったカメラを取り出し、感動的なまでに美しい自然を写真に収めることにしたのだ。

 

 自然には、確かに私たち人間の心を癒す力がある。あまりの美しさに時間を忘れて、草花や木々からあふれ出す生命の力に包み込まれているうちに、心も体もすっきりとリフレッシュされてゆくのだ。その美しさ、力強さは、まるで神様から私たちに向けられたメッセージのようにも感じられる。そのメッセージも写真に写し取り、伝えられたらと思う。