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自然に親しむ

末盛 千枝子

今日の心の糧イメージ

 まわりの山の雪もほとんど消えて、大きな山の最後まで残る万年雪の形を見ながら、お百姓さん達は田植えを始めます。あの万年雪があの形になったら、田植えを始めてもいいということは、きっと、大昔から、言い伝えられてきたのだと思います。私も、もうじき、田んぼに水が入るのだなと思って見ています。私の家からは、田んぼや畑が見えるのですが、本当に不思議なことですが、田んぼに水が入ったとたんに、その日の夜には、必ずカエルが鳴き出すのです。不思議でなりません。水が入るまで、いったいあなたたちはどこにいたの、とカエルたちに聞いて回りたいくらいです。そして、水が入って、稲がのびてくるまでの間、夜になるとまわりの家や、街灯や、そして風よけに植えてある木々が、田んぼの水に映って本当に美しいのです。こんなことは、ここに住むまで知りませんでした。ここの友人たちも不思議がっています。

 そして、まわりの木々の緑もどんどん濃くなっていくのです。春先には、あんなに淡く、はかなげで、ほとんどネズミ色に近いような緑だったのに、それがどんどん色が変わっていく様は、見事です。そして、真夏には、暑さの中で光り輝くようにきらきらと光る立派な緑です。それに、虫の声も違います。あんなにやかましいほどだった蝉の声も変わっていき、いつしか、夜になると秋の虫の声が聞こえてきます。ああ、もう秋なんだ、と思うと、ちょっと物悲しくなります。やがて、霜も降りるでしょう。そして、その間には星の動きも変わってきます。

 自然は、私たちが、自然とともに暮らしていることを教えてくれます。この世界には大きな秩序があるということでしょうか。神秘的なことです。