▲をクリックすると音声で聞こえます。

自然に親しむ

湯川 千恵子

今日の心の糧イメージ

 子どもの頃、よくママゴト遊びをしました。春には菜の花やレンゲをお皿に盛り、秋には熟して落ちた柿の実を「寒天のお菓子」として食べました。友達とお寺の裏山で椎の実を拾い、それを火鉢で炒って頬ばったものです。

 夏休みの川は子供天国でした。岸辺の大木に登り、大きな葉っぱを口に咥えて「ドボン!」と川に落ちるのです。大きい葉っぱを咥えるのは、水に落ちた時、鼻から水が入るのを防ぐためです。唇が紫色になるほど泳いだら、河原で柔らかい石をこすって顔に塗り、真っ白い顔の「お嫁さんごっこ」。浅瀬で「ゴリ」という 小魚を掬ったり、石の下にいるエビやかにを採ったりしました。それは夕食のおかずになりました。

 初夏の夜、水草の茂る川辺から蛍が無数に飛び立ちました。篭に一杯捕って座敷に吊った蚊帳にその蛍を放し。長年寝たきりの叔母を喜ばせたりしました。

 還暦過ぎてアメリカに留学した時、アパートの広い芝生から蛍が舞い立つのを見て驚きました。日本の蛍とは別種ですが、青白い光を放ってゆっくり飛び交う蛍の天然ショーの魅惑は同じで、毎晩愉しみました。野生のリスや兎が庭に来たり、近くの池に鴨の一家が住んでいたり・・・、とにかくこの町の豊かな自然は、異国で一人勉強する私のストレスを癒やし、力づけてくれました。

 

 来年傘寿を迎える私は今、近くの自然公園を歩くのが何より楽しみです。小さな里山は四季折々に色が変わり、池には鴨や白鷺が飛んできます。緑の広場が時には白い野草の花で輝きます。自然の移り変わりは地球の鼓動、神のいのちの現れ。私もその一員という感覚に浸れて幸せなひとときです。