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自然に親しむ

植村 高雄

今日の心の糧イメージ

 琵琶湖・唐崎の湖岸を訪れる機会がありました。私が訪れた先はカトリックの修道院なのですが、その近くには有名な唐崎神社があります。平安時代、天皇をはじめ貴族たちが禊の為にしばしば訪れたという場所です。その近くにカトリックの修道会がある、というのも歴史的にも、不思議な話です。

 世界各地にある聖なる場所に立った時感じる感情を、私はアースフィーリングと呼んでいます。この琵琶湖の修道院でも、それを感じました。この修道院でのミサの折、私は自分の生育史上の良い事悪い事、すべてが泉のように、こんこんと湧きだしたのですが、自然の風景と融合して、過去の嫌な想い出は水の流れのように自然の風景の中へと吸収されていきました。正に禊の風景でした。全てのものが流れ出た後の私の心には、暖かい感情、平安感、幸福感が湧きだしたのです。

 この修道院の聖堂は三階にあり琵琶湖が展望出来ます。そこでのミサは背景の琵琶湖の自然と親しんでいて、私が青年の頃から想い描いていた神様の世界なのです。

 自然に親しむと人間の防衛規制が崩れて心が自由になると言われています。心が自由になると知恵の泉が湧きだし、それぞれ厳しい現実を生き抜く知恵もまた生まれてきます。心が自由になると、色色のものが見えてきますが、その代表的なものは自然の中にある温かい愛情のような安心感です。日常生活での厳しい人間関係は、時に懐疑心を生みますが、この自然に親しみだすと、不安感、怒り、鬱等のストレス曲線が解消し、平安感、幸福感、統御感等の幸福曲線が見えてくるのが不思議です。

 人の身体は神の神殿といわれていますが、自然に親しむと更に共鳴するようです。