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自然に親しむ

新井 紀子

今日の心の糧イメージ

 メープルシロップをご存知ですか。カナダ産が有名ですが、ホットケーキにたっぷりかけて食べると、それはそれはおいしいのです。

 私は北海道大沼の森の中に住んでいます。ある日、我が家を訪ねてきた友人が言いました。「ここは板谷楓が多いなあ。この樹からメープルシロップが採れるよ」。私は大いに驚きました。日本でもメープルシロップが採れる。しかも、ここ北海道大沼で。

 

 どうするのかしら。私は知人、友人に聞いて回りました。そしてわかりました。

 

 直径が15センチ以上ある板谷楓を選ぶこと。冬になると葉が落ちてわからなくなってしまうので、目当ての樹木には、夏のうちに印をつけておくこと。採った樹液は、50分の1から100分の1に煮詰めること。

 

 翌年の早春、友人から電話がありました。

  「メープルの樹液が上がり始めたよ」

  私は夏の間、印をつけておいた板谷楓の元へ向かいました。雪はまだ1メートル以上あります。かんじきを履いて行きました。地上1メートルのところにドリルで穴をあけ、プラスチックの管を差し込みます。その管はペットボトルに通し、ペットボトル内に樹液が溜まるようにするのです。同じ装置を森の中の板谷楓6本に設置しました。

 

 毎日、見に行くのですが、樹液はなかなか溜まりません。寒すぎるのです。そのうち雪が解けて雨が降りました。翌日見に行くと、ペットボトルいっぱいに樹液が溜まっていました。万歳、大成功です。

 

 樹液を煮詰めました。大鍋いっぱいの樹液から牛乳瓶に1本ほどのシロップができました。フランスパンにつけて食べました。メープルの香りが口いっぱいに広がって夢見るような甘さです。

 

 北海道大沼の大自然よ、6本の板谷楓よ、素晴らしいメープルシロップをありがとう。