私たち人間も、本来は自然の生きもの、自然の一部なのではないだろうか。大自然は時に、人間の生命を脅かすが、それでも私たちは、透き通った海や晴れ渡る空、小鳥の囀りや川のせせらぎを心地よく、美しいと感じている。仕事に疲れ、人間関係に悩む時など、自然の美しさに触れると、いるべき場所に戻ったかのように、心が癒やされる。
都会を離れ、山や森の中を歩くのは、休日の楽しみだ。煩わしさを忘れ、心を澄ませていると、木々のあいだから、静かな声が聞こえてくるかもしれない。
「あなたは誰?」
それは、踏み込んできた闖入者に驚く生きものたちの声のようでもあり、身勝手で傲慢な人間を穏やかに諫める光の声のようでもある。「あなたは誰?」それは、私たち人間を裸にする問いかけだ。自然の中で、人は人間社会の装備を解き、虚栄を捨てて裸になれる。その時、どんな自分自身に出会えるだろう。
樹齢千年の大木の前で、一瞬の命である羽虫の前でさえも、私たちは小さな存在だ。だが、小さな自分たちが一体誰なのか、求めて止まない生きものでもある。静かな声は問い続けてくれるだろうか。願いを込めて、耳と心を澄ませていたいと思う。