▲をクリックすると音声で聞こえます。

心輝かせて

崔 友本枝

今日の心の糧イメージ

 先日、ふとした偶然で20年ぶりに知人に会い、愉しいひと時を過ごした。彼女は長い間病院で働いていたので多くの人とかかわってきた。最近は、何らかの理由で精神的な危機に陥る人が多いと言う。

 誰にでも理想はあるが、現実はその通りにならない。女の子が欲しかったのに男の子が生まれた、とか学者になるのが夢だったのに幼稚園の先生になった、などということは人生に多い。そんな時、自分の正直な感情を認め、受け止めることが大切だ。

 社会では、上司や同僚に欠点を見せると役に立たない人だと思われ、不利な待遇を受けやすい。だから、私たちは悲しくても、腹が立ってもニコニコして本心を出さない。生き延びていくための手段だ。同様に、自分の理想に合わない状況に遭遇した時も、自分自身にさえ失望や悲しみを隠してしまうことがある。

 だが、本心をごまかし、何も感じていないかのように過ごしてしまうと、後で精神のバランスが取れなくなったり、うつ状態になったりすることがある。会社では見せなくてもいい。ただ、自分は本心をつかんでいることだ。悲しければ部屋で泣くとか、声に出して夫や親友に思いを話すことが大切だ。

 私自身も経験があるが、感情を出してしまうと、怒りや悲しみなどから解き放たれて、別の角度から現実を見ることができる。たいていは、ありのままの状況を受け入れられるようになる。本心を大切にすることは自分自身を愛することだと思う。心輝かせて生きられる秘訣かもしれない。

 一つだけ気をつけなくてはいけないのは、他者に感情を生のままでぶつけないこと。理解しあっている関係の中で表現することだろう。