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心輝かせて

シスター 菊地 多嘉子

今日の心の糧イメージ

 私が属する共同体に、来日66年を迎えた今年、天国に旅立ったカナダ人のシスターがおりました。

 名をジャンヌ・ボッセと言い、30歳で日本に派遣され、日本をこよなく愛し、日本人に福音をのべ伝えるためには自分の命すら惜しまない熱意の人でした。昨年、メディアファクトリー社から出版した、「しあわせは微笑みが連れてくるの」「しあわせは涙のあとに届くもの」と題する2冊の著書は、現在も多くの読者に喜びと希望をもたらしています。

 この本を手にした人はまず、表紙の顔写真に魅了されてしまいます。シスターの温かな、輝くような微笑み、誰をも優しく包み込むまなざし。口元からは「よくいらっしゃいました。お待ちしていましたよ」という、いつもの言葉が聞こえてくるようです。

 「一度会ったら忘れることのできないシスター」と、言われていたのは、シスター自身、一度会っただけの人の名前をすぐに覚え、決してその人を忘れることがなかったからでしょう。毎日、祈りのなかで、その人のことをイエス様に語り、幸せを願っていました。「明るく元気に生きるために、いつも微笑んでいましょう。当たり前のことにも感謝しましょう。小さなことにも大きな喜びを見つけましょう」と著書に記されているすべては、シスターが神様と人々との関わりの中で保ち続けている心構えにほかなりませんでした。

 相手の幸せのみを願うシスターの心から溢れ出る言葉は、いつも「ありがとう」なのです。心が神様の愛で輝いているとき、誰に対しても、感謝といたわり、ゆるしと慰めの言葉を口にすることができることを、シスターは無言のうちに示しておりました。

 今、シスターは神様のおそばで、幸せに満たされながら、私たちのためにこの恵みを願っているに違いありません。