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心輝かせて

末盛 千枝子

今日の心の糧イメージ

 この4月、春の美しい陽をあびて、母校の入学式に行ってきました。私たちの学校では卒業して50年経つと入学式に呼んでもらうのがしきたりになっています。

 これはなかなかおもしろいと思います。入学式に臨む若者たちを見て、自分たちの若い日を思い、あの日からの自分たちの歩みを考えることになります。そして、若者たちは、自分たちの後ろに並んだ先輩の老人たちを眺めて、その時まで、自分たちがどのように生きていくかを考えるチャンスになるのだと思います。これは、案外珍しいことかもしれませんが、なかなか良いしきたりだと思います。

 人生は、あの入学式の頃、私たちが思っていたよりも、ずっと短く、しかも、いろいろなことが起こるのだと知ったと思います。私たちはみんな、人生には困難なこともあるけれど、喜びにも満ちていることを知りました。そして、それが、皆一人一人違うのだということも知りました。でも、だからこそ、生きるに値するのだということも知るのだと思います。必ずしも、自分の考えているように物事が動いていく訳ではないけれど、それでも、希望し続けることを知ることができれば、とても幸せではないでしょうか。なぜなら、忍耐は、希望し続けるためにこそ、必要なことだと思うからです。そういうことを思えるようになるのも、年を重ねてきたことによるのだと思います。これはとても素敵なことです。

 心輝かせて、新しい生活に踏み出す若者たちを見ていて、本当に感無量でした。あの日の私たちもあのように、無心に幸福を求めていたと思います。でも、結局は、あの日私たちに与えられたのは、困難にあった時に諦めない勇気だったのだと思います。